Vol.2 そもそも2019年時点、AI活用は経営において必須なのか?

「うちでもAIを活用したいと思っているんだよね」

僕はうんざりするほどこの言葉を聞いてきた。決まって、得意げな顔で皆さんこの言葉を投げかけてくるわけであるけれど、多分クラブで同じ言葉でナンパされ続けている常連の女の子のような気持ちだったのではないだろうか(もっともクラブには3回ほどしか言ったことがないので語る口は持っていないが)。

インターネット黎明期の話だと考えてみてほしい。

「うちでもインターネットを活用したいと思っているんだよね」

これは確かにおかしい話ではない。多分、たくさんの人が同じようなことを考え、でもどう使えるのかよくわからず、もしくは聞いてもイメージが湧かず、情報収集に勇んでいたのだと思う。

でも、上記のワードを2019年、現在聞いたらどうだろうか。「じゃあ、使えばいいじゃないか、何をいまさら言っているんだ」と、きっとあなたもそう思うはずだ。

そう、時は2019年、まずこれだけ情報ソース(≒インターネット)が溢れる時代に、人に聞くまでAIとは何かをわからない、または理解しようとも思っていない人がこれだけいることに驚くべきどころもある、が、今回の本題はそこではない。

遅くても10年後の未来、「うちでもAIを活用したいと思っているんだよね」と2019年時点における「うちでもインターネットを活用したいと思っているんだよね」はほぼ同義となることは間違いないだろう。

即ち、ほとんどの企業では「当たり前」になるということだ。僕の言い方でいうと、機械学習とHTMLは、至極存在価値の構造が似ているのだ。新規性も強い時期は扱える人間も少なく、希少価値があるように見えるが、実際にはインフラになるに近い技術なのであっという間に浸透し、使っていないことの方が驚かれるようになる。昔から「AIはコモディティー化する」とか言われているが、それのことだ。今となってはHTMLが使えなくても、WEBサイトが作れるような時代にもなってしまったわけで。

電気とインターネットとAIは構造が近い。当たり前にみんな使うようになる。

だからこそ考えてみてほしい。これらは「使えるか使えないか」ではなく「どう使うか、どう使うべきか」なのである。

AI活用という文脈において、大半の企業で考えるべきなのは「自社の経営課題は何か」ということである。なぜなら、ただでさえ重要ではあるが緊急ではないAIについて、課題意識すらないところで活用できると知っても、そのための行動を実務より優先できるはずはないからである。

その上で「どの経営課題はAIで解決できるか、AIで解決するべきか」を考えるのだ。このプロセスで進めている企業は比較的活用までスムーズに進む可能性が高い。逆に機能から考えていたり、事例は?とばかり言う企業はいつまでたっても進まない。10年後に慌てて後追いするのがオチではないだろうか。

インターネットでも同じことだったはずだ。インターネットや、クラウドを活用し、今は様々な「できなかったこと」ができるようになっている。AIも同じ感覚で考えてみてほしい。ある企業にとっては、それが企業の大きな飛躍の種になるだろうし、ある企業にとっては重大な問題からの脱却の足掛かりになるだろう。

でも、それは猿まねでは起こりえない。「意志」があってのことだ。

「意志」がある企業では、即ち明確な課題意識や目的のある企業では、今AI活用が着々と進んでいる。それは、「今やるべきなのか、3年後やるべきなのか」といった判断をするところも含めての進捗である。実際のところ技術的には実現できても、今だとまだ投資対効果のとれないプロジェクトも多数存在する。

僕たちが、まずやらなくてはならないのは経営において「AIを活用する」ことではなく、「AIを活用する『意志』を持つ」ことなのではないだろうか。今、この時点で必須なのかどうかもしっかり見極めることが重要だと思う。しかし、ただ漠然とはやりすたりになびいたり、危機感すら持てずにたたずむだけのような会社が、競合より先を行くことはありえないだろうから。

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