展示会の客層が地に落ちた。
・・・と、書いてしまうと、多分僕への批判が殺到してしまうだろう(特にAI界隈の展示会に足を運んでいる人たちからの!)が、明らかに変化があった。俗に言う「AIブーム」は約1年半くらいで終わったと言えるだろう。
今やAI関係の展示会に来ている層は9:1(もしくははるかにそれ以下、もちろん1の方が小さくなる)で以下のように分かれる。「社会科見学層」と「明確な課題を持っている層」だ。
まだまだ黎明期ともいえる頃に、AI関係の展示会で大きな成果を何度も上げていた僕らとしては、今の展示会の状態は悲鳴を上げたいような状態である。当時は、大企業の役員クラスや経営企画部の方々がこぞって来訪しており、僕らのような無名のベンチャー企業であっても、各社との大きなプロジェクトが何個も成立できた。
それが今やどうだ。大半は「社会科見学層」であり、経営企画部などと仕事を進めてきた僕らとしては、案件にならないような形がほとんどである。
しかし、それは同時に展示側企業の変化も意味するわけで。
全体を見渡してみても、どうもAIと関係ないような展示企業が増えた部分もある。これも大きく分けると2個の要因がありそうだ。「①AIをお金に変えるのが難しいと捉えられた」点と、「②AIに幻想を抱いている層に、新規性は強いが現実的なものを売ろうと考えた」点との2点だ。
AI活用の現場に2年半いるからこそわかる、多くの会社はブームの最中に潰れた。「賞獲りました!」とことある度に派手に露出していたあの会社も、絶対的な技術力だと謳っていたあの会社も、今はもう、ない。外への見せ方がうまくて、実際には技術者が不足している企業がほとんどなので、出資で受けきれた金額がなくなってしまえば、あの企業も、あの企業も、きっと難しいのだろうと思う。
一時は人で賑わった熱海銀座がシャッター街になったような、そんな儚さすら感じる様相を呈していく。
しかし、活路はある。何しろ、機械学習を始めとした新技術群は確実に今までできなかったことをできるようにしているからである。本当にとびぬけた技術を持った会社や、その新しきの使い方を誰よりも理解した会社や、いくつかの企業群からすると今はまさに絶好のチャンスである。
見せ方だけのハリボテの競合が軒並み競争から離脱していくところだからである。
逆に言えば、発注しようとする側からしても、現在は判断がしやすくなってきた。実績を積みながらも市場にとどまり続けられている企業こそ、力を持っていることを証明しているフェーズに入ってきたからである。
そんな当たり前の話を並べながら、本題に入ろうと思う。要するに、不透明だったAI界隈も儲け方がはっきりしてきた、そして儲け方を理解し、それを遂行している企業のみが今なんとか、または思うほどではないが儲かっている、もしくはとりすぎるほどとって焼畑農業している状態だ。
圧倒的な事実として、あなたを含むほとんどの見込み客は「AIに興味はある」が「『AIでどの課題を解決するか、するべきか』が全く明確にはなっていなかった」し、今も多分明確になっていない企業の方が多い。単純な話、今活用が進んでいる大半の企業は「解決すべき課題」と「それに対する解決策となる技術」が明確になっていた企業だ。(あとの半分は某IT企業群の口車にまんまと乗せられた企業だが)
今生き残ってきたプレーヤーたちは、その現状があること、そしてその現状が今しばらく続くことをしかと理解している。そして、彼らは考え、そして絞ってきている。「私たちは誰(どんな業界、規模、部署)に、どのような価値を提供するのか」と。要するに、AIという言葉に踊らされず、本質的にマーケティングの原理に基づいて思考する企業だけが今後も残っていくし、活躍していくわけである。
また、一方でその「何もわかっていないままの見込み客層」がAIという言葉に踊らされているところの、実際本質的に抱えているニーズに対して、「技術的には何の新規性もないが、新しく見えるし、実際今までできていなかったことができそうなもの」を提供することで、大きくマネタイズしている企業群がある。非常に頭もいいし、戦術としてはかなり強い。
ただ、「今は」強い、という言い方が正しいのかもしれない。
多くのそういったものは1年もたたずに既に市場がレッドオーシャンだ。どんどんアポイントも取りづらくなるし、やはり誰でもできるものは、誰でもやってしまうのが当然だろう。
そんな市場の状況も念頭に置いた上で、僕はこの場所で、独断と、偏見を、存分にまき散らして、これからのAI活用について綴っていきたい。
キーワードは「働き方改革」である。
これからのAIを企業がビジネス活用する背景には、「働き方改革」の文脈の上にある時代であることが前提となるだろう。
そういった文脈なく、自社事業のアップデートのためにAI活用を目論めるビジネスモデルの企業は、既に手掛けている勝ち組か、不確かなものにおびえて手を出すことのできなかった負け組かに最早しっかりと分類されているだろう。
「経営」という正解のない活動の中で、僕たちがどうAIと向き合っていくべきなのか、これから綴っていくこととする。
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